栃木県産ニラはなぜ餃子に合う?産地の話と家庭でのおいしい食べ方

宇都宮で食のライターをしている小野寺恵美です。
栃木県内のスーパーに13年勤め、そのうち8年は催事や実演販売を担当するバイヤーをしていました。

売り場に立っていた頃、寒くなるとニラの棚の前で立ち止まるお客さんが増えるのを毎年見ていました。
「今夜は餃子にしようかな」という声が聞こえてくるのも、たいていこの季節です。

栃木といえばいちごの印象が強いかもしれません。
けれどもニラも、全国で指折りの産地です。
地元に住んでいても、どれくらい作られているのか、なぜ餃子に向いているのかまで知っている人は意外と少ないものです。

この記事では、国や県の資料をもとに栃木のニラの産地の話を整理し、ニラが餃子に合う理由と、家庭でおいしく使うコツをまとめました。
次にスーパーでニラを手に取るとき、少し見え方が変わると思います。

栃木県は全国有数のニラ産地

畑の広さは全国1位、収穫量は2位

まずは数字から見ていきます。
農林水産省の作況調査(野菜)で2026年9月に公表された令和7年産の第1報では、主な産地は次のとおりでした。

県作付面積収穫量出荷量
高知県265ha15,600t14,700t
栃木県285ha7,610t6,970t
茨城県200ha6,840t6,150t
全国1,760ha52,300t47,500t

※令和7年産の第1報は概数です。

ニラを作っている畑の広さは栃木県が全国で最も広く、収穫量は高知県に次いで2位です。
全国の収穫量のおよそ7分の1が栃木県産という計算になります。
1年前の令和6年産の確報でも、栃木県は作付面積289haで1位、出荷量7,600tで2位でした。

畑が広いのに収穫量で高知県に届かないのは、10aあたりにとれる量が違うためです。
令和7年産で比べると、高知県が5,890kgなのに対して栃木県は2,670kgでした。
農畜産業振興機構は、こうした差の背景として気象条件や作型、ハウスの加温のしかたの違いを挙げています。

県の農業の中での存在感も大きく、農林水産省がまとめた栃木県の農林水産業の概要では、ニラは「いちご、トマトに次ぐ産出額を誇る重要野菜」と紹介されています。

県が育てた品種「ゆめみどり」

栃木県は、ニラの品種づくりにも取り組んでいます。
県が育成した「ゆめみどり」は、2017年2月に品種登録されたニラです。

栃木県の「ゆめみどり」紹介資料には、特徴として次のような点が挙げられています。

  • 葉がピンと立ち、株元が長いので収穫や調製がしやすい
  • 葉が厚く、葉幅が広い
  • 茎の数は少なめでも1本ずつが重く、収量が多い
  • 収穫を重ねても品質が安定している

先ほどの農林水産省の資料には、このゆめみどりを広めて「収穫量日本一を目指す」とも書かれています。
2位から1位をうかがう地元のニラの行方を、私も一人の栃木県民として楽しみにしています。

なお栃木県では、ゆめみどりのほかに「タフボーイ」「ミラクルグリーンベルト」「ワンダーグリーンベルト」といった品種も作られています。
売り場で品種名まで書かれていることは少ないものの、産地の努力が詰まった野菜だと知ると、手に取るときの気持ちも少し変わります。

冬にらと夏にら、首都圏の食卓にも届く

JA全農とちぎは、11月から3月に収穫するものを「冬にら」、4月から10月に収穫するものを「夏にら」と呼び、一年を通して出荷しています。
栃木のニラについては「甘みがあって風味がよく、味わいに深みがある」と紹介しています。

栃木のニラは首都圏にもたくさん出回っています。
農畜産業振興機構の「にらのあれこれ」(野菜情報2026年7月号)によると、令和6年の東京都中央卸売市場のニラの入荷は、栃木産と茨城産が大きな割合を占めていました。
月によっては、入荷量の3割以上が栃木産です。

ニラは同じ株から何度も収穫できる野菜で、11月から4月ごろに収穫されたものがやわらかく、一番おいしいといわれます。
ちょうど栃木の冬にらの時期と重なるので、栃木のニラで餃子を作るなら冬から春先が狙い目です。

ちなみに同じ資料では、全国のニラのご当地料理として福岡の「もつ鍋」や大分の「にら豚」と並んで、栃木の「にらそば」が挙げられています。
炒め物やおひたしなど使い道はいろいろありますが、餃子の具もその代表として紹介されています。
栃木の人にとってニラは、それだけ食卓に近い野菜です。

ニラが餃子に合う理由

においの元は刻んだときに生まれる

ニラには、メチインやアリインという硫黄を含む成分が入っています。
刻んで組織が壊れると、これが酵素と反応して揮発性の成分に変わり、ニラ特有のにおいになります。

つまりニラの香りは、包丁を入れたときに立ち上がるものです。
具を細かく刻んで皮で包む餃子は、ニラの香りを引き出しつつ、皮の中に閉じこめられる料理です。
焼き上がった餃子をかじった瞬間にふわっと香るのは、この仕組みのおかげです。

豚肉と組み合わせると理にかなう

ニラのにおいの成分は、ねぎと同じ硫化アリルの仲間です。
硫化アリルにはビタミンB1の吸収をよくする働きがあり、農畜産業振興機構はビタミンB群が豊富な豚肉やレバーとの相性は抜群だと紹介しています。

餃子は豚ひき肉にニラを合わせる料理です。
昔から当たり前のように続いてきた組み合わせですが、栄養の面から見てもちゃんと筋が通っています。

ニラは、β-カロテンを豊富に含む緑黄色野菜でもあります。
野菜の少ない献立になりがちな日でも、ニラ餃子なら肉と一緒に青菜をたっぷり食べられます。

火が通ると香りが丸くなる

生のニラを少しかじると、ツンとした辛みを感じます。
それが餃子の皮の中で蒸し焼きにされると、角が取れて、ほんのりした甘みが前に出てくるように感じます。

催事売り場で焼きたての餃子を試食に出していた頃も、ニラ入りの餃子を焼き始めると「いい匂いだね」と足を止める人が増えました。
焼いているそばから香りが広がるのも、ニラ餃子の強みです。

餃子に使うニラの選び方と保存

売り場で見るポイント

ニラは鮮度が味に出やすい野菜です。
農畜産業振興機構の資料を参考に、売り場で見たいポイントをまとめました。

  • 葉の幅が広く、やわらかそうなもの
  • 根元の切り口が新しいもの
  • 葉の色つやがよく、葉先までピンと伸びているもの
  • 葉先が折れていたり、葉に白い斑点があったりするものは避ける

バイヤー時代、ニラは「入荷したその日のうちに売り切りたい野菜」の代表でした。
棚に並んで半日もたつと、葉先がしんなりしてくるのが分かります。
餃子に使うなら、作る日に買うのがいちばんです。

冷蔵と冷凍の保存

すぐに使えないときは、次のように保存します。
農畜産業振興機構の野菜ブック「にら」(野菜情報2026年6月号)の内容をもとに整理しました。

保存方法やり方気をつけること
冷蔵葉先が折れないようラップで包み、野菜室に立てて入れる一度しおれると水につけても戻らない
冷凍洗って使いやすい長さに切り、キッチンペーパーで水気をよく取ってから保存袋や密閉容器へ水気が残っていると傷みやすい

傷みやすいので、まとめ買いは控えめにして早めに食べきるのが基本です。
私は冷凍したニラを餃子に使うとき、解凍せず凍ったままあんに混ぜています。
解凍すると水が出て、あんがゆるくなりやすいからです。

家庭でニラ餃子をおいしく作るコツ

切るのは包む直前に

ニラは、あらかじめ切っておくと酵素の働きでにおいがきつくなります。
そのため刻むのは調理の直前がよいとされています。

餃子作りでは、つい野菜を全部まとめて刻んでおきたくなります。
私は白菜やキャベツの下ごしらえを先に済ませ、ニラだけは皮に包む直前に刻むようにしています。
洗うときも水にさらしすぎず、さっと洗って水気をしっかり拭き取ります。

根元は細かく、葉先はやや粗めに

ニラは、根元と葉先で含まれる成分が違います。
根元の白い部分にはアリシンが多く、細かく刻むとさらに増えるとされています。
一方で、葉先に多いカロテンやビタミンEは、切ったり炒めたりするうちに失われやすい成分です。

これを知ってから、私は餃子に入れるニラの切り方を変えました。
根元はできるだけ細かいみじん切りにして、香りの芯としてあん全体に行き渡らせます。
葉先は5mmほどの幅にざっくり切り、刻みすぎないようにしています。
食べたときにニラの緑がちゃんと見えて、食感も残ります。

水気を絞るのは白菜やキャベツのほう

ニラ餃子がべちゃっとする原因の多くは、野菜から出る水分です。
ただし、絞る必要があるのはニラではなく、白菜やキャベツのほうです。

味の素パークの「白菜の焼き餃子」のレシピでも、白菜は塩をふってもみ、水気を絞ってから使います。
ニラはみじん切りにするだけで、塩もみはしていません。
ひき肉に塩を加えて粘りが出るまでこねてから、野菜を加える手順になっています。

具材下ごしらえねらい
白菜・キャベツ刻んで塩をふり、もんでから水気を絞るあんが水っぽくなるのを防ぐ
豚ひき肉塩を加えて粘りが出るまでこねる具がまとまり、包みやすくなる
ニラ包む直前に刻み、最後に混ぜる香りを逃がさない

このレシピの分量は、4人分で豚ひき肉100g、白菜200g、ニラ20gです。
ニラの香りをもっと前に出したいときは、私は白菜を少し減らしてニラを倍くらいに増やします。
わが家ではこのくらいがちょうどよく、焼いたときの香りがぐっと強くなります。

包むときは葉先をはみ出させない

ニラを多めに入れると、あんから葉先が飛び出しやすくなります。
皮の外に出たニラは焼いているうちに焦げて、苦みの原因になります。

あんは皮の真ん中に置き、量を欲張りすぎないのがコツです。
大さじ1弱くらいを目安にすると、ヒダを寄せても口がきれいに閉じます。
包み終わった餃子は乾かないよう、ふきんやラップをかけておくと皮が割れにくくなります。

包む時間がない日は、栃木のニラを使った市販品を

とはいえ、平日の夜に餃子を何十個も包むのはなかなか大変です。
そんな日は、市販の冷凍餃子に頼ります。
選ぶときに私が見ているのは、原材料表示に書かれた野菜の産地です。

宇都宮市に本社を置く和商コーポレーションの「にら餃子」は、原材料表示に「にら(栃木県産)」とはっきり書かれています。
1個50gと大ぶりで、機械に頼らない手包みです。
公式サイトでは、水なしで焼けることも特徴に挙げています。

家庭向けには、にら餃子と定番のにんにく餃子を15個ずつ詰めた30個入りのセットがあり、2026年10月時点の公式サイトでは税込3,950円(送料別)です。
同社はスーパーや百貨店で焼きたてを売る実演販売も行っています。
バイヤーをしていた頃、餃子の実演販売コーナーの前にはいつも人だかりができていたのを思い出します。

会社の歩みや商品の買い方については、和商コーポレーションについてまとめたページで詳しく紹介されています。

まとめ

栃木県は、ニラの作付面積が全国1位、収穫量が全国2位の産地です。
県が育てた「ゆめみどり」をはじめ、一年を通して冬にらと夏にらが出荷され、首都圏の食卓にも数多く届いています。

ニラが餃子に合うのは、刻むことで香りが立ち、その香りを皮の中に閉じこめられるからです。
においの元になる硫化アリルは豚肉との相性もよく、昔ながらの組み合わせにはちゃんと理由がありました。

家で作るときに覚えておきたいのは、次のことです。

  • ニラは包む直前に刻む
  • 根元は細かく、葉先はやや粗めに切る
  • 水気を絞るのは白菜やキャベツのほう

これから冬にかけては、栃木のニラがいちばんやわらかくなる季節です。
売り場で葉先までピンと伸びたニラを見つけたら、ぜひ今夜の餃子に使ってみてください。