生産技術コンサルタントの三宅慎吾です。
電子部品メーカーで14年、接着剤や放熱グリスの塗布工程を担当してきました。
最初の立ち上げで、フィラー入りの放熱グリスをエア式で流そうとして、1週間ノズル詰まりと格闘したことがあります。
方式選定で材料を見ないと、こうなります。
兵神装備の2020年の自社調査では、使用中のディスペンサーはエア加圧式が46%と最多で、困りごとの2位が「吐出量にばらつきがある」でした。
この記事では3方式の違いを、粘度とフィラーの有無を軸に整理します。
Contents
3方式の違いを一枚の表にする
| 方式 | 吐出量の決め方 | 粘度変化の影響 | フィラー入り材料 | 得意な塗布 |
|---|---|---|---|---|
| エア式 | 空気圧×加圧時間 | 受けやすい | 沈降・詰まりが起きやすい | 低〜中粘度の点塗布 |
| スクリュー式 | スクリューの回転量 | 受けにくい | 攪拌されるため向く | 連続塗布・ビード塗布 |
| プランジャー式 | プランジャーの移動量(容積) | 受けにくい | 耐摩耗仕様なら向く | 高精度の点塗布・注入 |
エア式は手軽だが、粘度と残量に振り回される
エア式はシリンジ内の材料を空気圧で押し出す方式で、安価で最も普及しています。
ただし吐出量を「圧力×時間」で決めるため、粘度が温度で変わると、同じ設定でも出る量が変わります。
シリンジの残量が減ると押し出す力も変わる、いわゆる水頭差の問題もあります。
武蔵エンジニアリングもディスペンサーの種類を解説した公式FAQで、残量や粘度変化が吐出量に影響する点をエア式のデメリットに挙げています。
フィラー入り材料では、シリンジ内で粒子が沈んで濃度まで変わります。
スクリュー式は連続塗布とフィラー入り材料に強い
スクリュー式は、回転するスクリューで材料を送り出します。
回転量と吐出量がほぼ比例するので、ビード塗布のような連続塗布で線幅が安定します。
スクリューが常に材料をかき混ぜるため、フィラーの沈降を抑えやすい点も助かります。
放熱材や導電性接着剤に選ばれるのはこの理由です。
弱点は間欠的な点塗布との相性です。
止めるたびに液切れの調整が要り、少量を正確に打つ工程には向きません。
プランジャー式は容積で計るので粘度変化に強い
プランジャー式は、シリンダー内に材料を吸い込み、プランジャーの移動量で決まった体積を押し出します。
体積で計量するため、粘度が多少変わっても吐出量が変わりにくいのが強みです。
ただし、負圧で吸い込む構造のものは高粘度材料を吸えず、フィラーがシリンダーの隙間に入ると摩耗して精度が落ちます。
高粘度・フィラー入りを扱うなら、加圧供給と耐摩耗仕様を備えた機種を選ぶ必要があります。
たとえばナカリキッドコントロールは、ポンプ耐圧を19.6MPaまで高め、使用可能粘度1,050,000mPa・sまで対応した高粘度・フィラー入り材料向けのプランジャポンプ式ディスペンサ「P-FLOW Hタイプ」を用意しています。
現場でどう使い分けるか
私が選定時に見る順番は次のとおりです。
- 材料にフィラーが入っているか。入っているならエア式は候補から外す
- 点塗布か連続塗布か。連続ならスクリュー式、点なら容積計量式が第一候補
- 粘度が10万mPa・sを超えるか。超えるなら加圧供給の有無を確認する
- チキソ性があるか。あるなら吐出前後で粘度が変わる前提で条件出しをする
チキソ性は、力を加えると流動性が増し、力をなくすと元に戻る性質です。
初めて聞いた方は、スリーボンドの粘度とチキソトロピーの解説ページを読んでから材料メーカーに聞くと話が早いです。
カタログの粘度範囲は「流せる」の意味で、「安定して流せる」とは限りません。
必ず自分の材料でテスト吐出をしてから決めてください。
まとめ
エア式は安価で汎用的ですが、粘度と残量の影響を受けます。
スクリュー式は連続塗布とフィラー入り材料に向き、プランジャー式は容積計量で粘度変化に強い反面、高粘度・フィラー入りでは機種選びが肝心です。
方式の名前で選ばず、材料の粘度とフィラーの有無から逆算する。
この順番さえ守れば、ノズル詰まりで1週間を無駄にすることはないはずです。
最終更新日 2026年9月5日 by hedese
